期限内に連絡・回答をする

不倫の慰謝料請求では、通常、いつまでに支払え、という慰謝料の支払い期限が指定されています。併せて、その期限までに支払いも連絡もない場合には訴訟に移行する旨の予告があることが普通です。

その期限までに支払いも連絡もしないと、すぐに訴訟を提起される恐れがありますので、示談による解決を望む場合は特に、期限までに連絡をする必要があります。

連絡や回答は、書面でも電話でも自分のやりやすい方法で大丈夫です。

回答の内容

事実と相違する点

まずは、慰謝料請求の根拠として主張されている事実経過等について、事実と相違する点があればそれを指摘しなければなりません。

ただ、細かい事実の1つ1つについて食違いを指摘することが得策とは限りません。

例えば、自分が指摘しようとしていることが、相手の感情を逆撫でするだけで慰謝料の減額につながるほどのこととは言えないようなときは、食い違う点を具体的に主張しない方がかえってよい場合もあります。

このような場合は、どことは特定せずに、かといって自分の認識と食違う点があること自体は伝えなければならないため、表現を工夫する必要があります。

他方、慰謝料金額を大きく左右するような事実については、自分の認識と食い違う点を具体的に主張せざるを得ない場合が多くなります。

慰謝料金額の相当性とその根拠となる事情

不倫の事実を概ね認める場合(立証の難易度に鑑みてあえて争わない場合も含みます)には、むしろ、慰謝料金額が示談交渉のメインテーマになります。

請求されている慰謝料金額が相当とはいえない場合(高過ぎる場合)は、その旨自分の見解を伝えるとともに、可能であれば、なぜ高額に過ぎるのか、その根拠となる事実(事情)を示します。例えば、離婚や別居に至っていないことなどの事情です。

もちろんそのためには、裁判や示談交渉の現場において、どのような事情があるときにいくらくらいの慰謝料になることが多いのか、ということを知っていなければなりません。

慰謝料の支払い能力(収入・資産)

請求された慰謝料金額が事実経過等に鑑み法外・不相当とは言えないとしても、支払い能力がないために(収入や資産がないために)大きく減額してもらわない限り支払うことができない、という場合もあります。

そのような場合は、率直にその旨およびいくらなら支払えるのかを申出るべきです。これに請求側が応じるかどうかは分かりませんが、少なくとも交渉をせずにあきらめてしまうことではないと思います。

支払期限や分割払いの希望についても同様です。

示談交渉の特殊性

示談交渉の場合は、裁判(訴訟)の場合と異なり、どちらの言い分が正しいのかを最終的に判断する人が存在しないということを忘れてはいけません。

したがって、双方の言い分が食い違う場合に、自分の意見を相手に認めさせようとがんばってみても、上手くいくことはあまりありません。

示談交渉とはむしろ、双方の言い分が食い違うことを前提にして、それでも解決を目指すものだと思います。

特に、示談による解決を強く望む場合は、この議論が示談解決という目的のために必要なのかどうかを、いったん冷静になって考えてみる必要があります。

交渉態度

不倫をしたといっても、犯罪を犯したわけではありません。反省すべき点は反省し、また傷ついた相手の気持ちに配慮することは必要だと思いますが、示談交渉においては(もちろん裁判においても)言うべきことは遠慮することなく言わなければなりません。

慰謝料以外の要求に対して

不倫の慰謝料請求では、慰謝料以外のことが慰謝料と合わせて要求されることがよくあります。以下に、よく見られる要求について検討します。

連絡・接触禁止

今後不倫を継続しないことはもちろん、接触や連絡を断ち切ることなどの要求です。

接触や連絡を断ち切るよう要求を受けたのにも関わらず、これを断ったり、要求を受け入れて約束したのにも関わらず後に約束を破ったりすると、慰謝料の増額事由とされることがあります。

したがって、不倫交際を続けるつもりがない場合は、このような要求には応じるべきですし、接触・連絡をしないという約束をした場合にはその約束を守らなければなりません。

退職要求

同じ会社に勤める2人が不倫をした場合、会社を自主的に退職するよう求められることがあります。

しかしながら、こういった要求は法的には何ら根拠のあるものではなく、事実上の要望(お願い)に過ぎませんので、このような要求を受け入れる必要はありません。むしろ明確に「退職するつもりはない」旨相手に伝えるべきです。

自分の両親への訪問、慰謝料の要求

(不倫相手が未成年でもないのに)不倫相手の両親に連絡をしたり訪問をしたりして、不倫の事実を告げられたり慰謝料を要求されることがあります。

不倫相手の両親には、慰謝料を支払わなければならない法的義務は一切ありません。したがって、慰謝料の支払いはもちろん、面会や連絡を両親が拒否することは一向に差し支えありません。それでも面会要求や連絡が続く場合は、その行為自体が違法な行為になります。

示談書に盛り込むべきこと

示談交渉の結果、慰謝料金額とその支払い方法について合意に至った場合には、あとはその他の事項を必要に応じて示談書に盛り込みます。

第三者への開示・漏洩禁止

今回の不倫の件、示談の件を第三者に漏らしたり開示したりしない、という条項は、それを双方が望むことが多いため、示談書に盛り込まれることが多い条項といえます。

配偶者と不倫相手との接触・連絡禁止

不倫の再発を防止するために慰謝料請求側から要求されることの多い条項です。

このような約束に応じなければならない義務が法的にあるわけではありませんが、示談解決のために必要でありかつ受け容れられる内容であれば示談書に盛り込んでも構いません。

ただ、接触・連絡の禁止条項に違反した場合の違約金を定める場合は、特に慎重な判断が必要です。

示談の当人どうしで今後接触・連絡しないこと

示談の当事者どうし、すなわち慰謝料の請求側と請求を受けている不倫相手とが、お互いに対して今後連絡したりしないことを約束するものです。これも示談書に定められることの比較的多い条項です。

証拠資料の回収は期待できない

慰謝料を請求された立場からは、示談する以上、調査事務所による証拠資料等があればこれを回収したいという思いが強いと思います。

しかしながら、証拠資料の回収は極めて難しいと言わざるを得ません。なぜなら、配偶者との離婚の際、あるいは万が一不倫が繰り返された際等に、今回収集した証拠資料が必要になることが考えられるため、慰謝料請求側が回収に応じることは考えられないからです。

他に債権債務がないこと

示談書で決めたこと以外には債権債務がないことをお互いに確認する条項です。

この条項は、示談した後に追加で金銭の請求をされたりすることを防ぐために盛り込むもので、この条項のない示談書は存在しないといっても過言ではないほど一般的な条項です。

不倫の事実がない場合

不倫の慰謝料請求をされても、不倫の事実がそもそもなければ、慰謝料を支払う義務は当然のことながらありません。

但し、慰謝料請求ができるのは、性的関係(肉体関係)がある場合に限らないということは、『どんな場合に不倫慰謝料を請求できるか』のページで説明したとおりです。

いずれにしても、慰謝料を支払わなければならないような不倫の事実がないのに慰謝料を請求されているということは、請求する側が勘違いをしているか、思い込みにより請求しているということです。したがってこれが誤解であることを認識してもらうために、不倫の事実がそもそもないことを「最初の段階で」「明確に」伝えなければなりません。

他方、不倫の事実自体はあるのに、請求側に証拠がなさそうだという理由などであえて不倫の事実を否定した場合、この否定したことが後に慰謝料増額の事由にされることを覚悟しなければなりません。

ところで、不倫の事実がないことを主張しても請求側が納得しない場合は、示談の成立は期待できません。

そこで、裁判(訴訟)をされても構わなければ「要求に応じることはできないこと、(要求に応じないことによって)訴訟になったとしてもやむを得ないと考えていること」を伝えて実際に裁判にされるのを待つというのが基本的な対応になります。

もっとも、事実無根とはいえ、裁判になった場合の時間的・費用的・精神的負担を考えて、いくらか解決金を支払ってでもとにかく示談で終わらせたい、という考え方もあります。そのように考えるのであれば、請求側にその旨伝え、交渉をするしかありません。

ただ、少額での示談解決に応じるか、訴訟にするかは、請求側に選択権があることに変わりはありません。