不倫慰謝料に一律の金額はない

不倫慰謝料の相場についてよく質問されますが、不倫をされたら慰謝料はいくら、という決まった金額があるわけではありません。

というのも、不倫慰謝料の金額は不倫をされた側の精神的苦痛の大きさによって決まりますが、この精神的苦痛の大きさは、まさに不倫のケースごとに異なると言うよりほかないからです。

精神的苦痛の大きさは直接測定できない

さらに、不倫されたことによる精神的苦痛の大きさは、体温や血圧のように直接測定することができません。

そのため、例えば不倫によって離婚に至った、というような客観的な事情から精神的苦痛の大きさを推し測り、慰謝料の金額を決めるしかありません。

基本的な物差しは生活状況の変化の大きさ

それでは、どのような事情が考慮されて慰謝料の金額が決まるのでしょうか。ここで思い出していただきたいのは、不倫慰謝料がなぜ認められるのかということです。

この点、夫婦共同生活の平和を脅かす行為であるという理由で不倫の慰謝料が認められるのでしたね。そうである以上、夫婦共同生活の状況が不倫によってどれだけ変わってしまったのかということが、慰謝料の金額を決める際にも基本的な物差しとなります。

例えば、円満であった夫婦生活が、不倫によって破綻し、離婚に至った、というケースを考えてみますと、このような場合夫婦共同生活の状況変化は大きく、したがって慰謝料の金額も高額になります。

反対に、もともと全く円満ではなかった夫婦生活が、不倫によってさらに破壊させられたものの、離婚や別居をすることなく表向き今までどおり同居している、というケースを考えてみますと、このような場合夫婦共同生活の状況変化は小さく、したがって慰謝料の金額も低額になります。

慰謝料金額に影響する要素・事情

以上を基本としつつ、不倫された側の精神的苦痛の大きさを推し測ることのできるあらゆる要素・事情を考慮して不倫の慰謝料は算定されます。以下はその例です。

慰謝料増額の方向に働く要素・事情

  • (慰謝料請求側が)不倫によって離婚をした。/離婚の訴訟・調停・協議中である。/別居中である。
  • 慰謝料請求側に未成年の(独立していない)子がいる。
  • 婚姻期間が長い。
  • 不倫後に配偶者が生活費を渡さなくなった。
  • 不倫の事実を知らずに配偶者との間に子ができ、その後に不倫が発覚した。
  • 不倫発覚後の体調変化が著しい(体重減、不眠等による入通院、服薬継続)。/そのために休職・退職を余儀なくされた。
  • 不倫発覚後も不倫相手と配偶者が同居中、交際継続中。
  • 不倫相手と配偶者との間に子が生まれた。/懐胎した事実がある。
  • 不倫の期間が長い。/回数が多い。
  • 不倫の中止を要請したのにもかかわらず不倫が継続された。/不倫の中止を約束したのにもかかわらず不倫が継続された。
  • 不倫相手の攻撃的、挑発的な言動、その他請求側の夫婦関係を積極的に破綻させようとする不倫相手の言動があった。
  • 不倫相手がその優越的地位(職場における上司等)を利用して配偶者を誘惑した。
  • 不倫相手が不倫の事実を認めなかった。/反省・謝罪が一切ない。

慰謝料減額の方向に働く要素・事情

  • (慰謝料請求側が)夫婦関係の修復を目指して同居中。/別居、離婚をするつもりがない。
  • 婚姻期間が短い。
  • 慰謝料請求側の夫婦関係が不倫前に破綻寸前だった(完全に破たんしていた場合は慰謝料支払い義務なし)。
  • 不倫期間が短い。/回数が少ない。
  • 不倫相手側が真摯に謝罪した。
  • 法律上の婚姻関係がない(内縁関係/婚約関係)

最後に、不倫相手の経済状況は、法的にというよりも事実上、慰謝料の決着金額に影響するといえます。

不倫慰謝料の一般的な上限、下限

不倫慰謝料請求の裁判になった場合は、上に挙げた事情に限らずあらゆる事情を裁判所が総合的に考慮して慰謝料の金額が決まるわけですが、現在のところ、不倫慰謝料の一般的な上限は300万円程度、下限は数十万円程度と言ってよいのではないかと思います。

裁判と示談による慰謝料金額の違い

裁判になった場合の時間的・費用的・精神的負担を考えると、多少金額に不満があっても示談することは大いに考えられます。慰謝料を請求された不倫相手側にその傾向がより強く見られます。

したがってそのような場合は、慰謝料請求側が裁判による決着を試みても、示談した場合以上に有利な条件で決着できる期待はあまり持てません。

反対に、不倫相手側が、裁判にされた場合における見通しを誤り、示談をしなかった場合(むしろ裁判を望んだ場合)は、結果的に示談よりも不利な条件で決着せざるを得ないはめに陥ることがあります(あのとき示談しておけばよかったと後悔することになります)。